白い日差しとやかさ


「暑い……」

窓から容赦なく侵入してくる日差しを避けて、冷たい壁にべたっと背を貼り付けたルックは汗で張り付いた前髪を乱雑に掻きあげ呻いた。
暑くて暑くて仕方ないといった様子のルックに、ベッドに腰を下ろし薄い冊子の本を捲っていたユンファは呆れたように苦笑する。

「本当に暑さに弱いなあ」
「…うるさい。こんな暑さのなかで本を読むアンタの方が気がしれないよ」

髪を掻きあげたまま、ルックが鬱陶しそうに顔を背ける。
夏の日の午後のこと。
ユンファにとっては我慢できない暑さではないのだけれど、暑さにとことん弱いルックにとってはこれが耐え切れないらしい。
口の悪さからいって相当機嫌の悪いルックに、寒いのはまだ平気なんだけどなあとユンファは本を片手にベッドから降りた。

「砂漠とか行ったら、お前溶けそうだな」
「そんなところ、行く前に飛んでやるよ」
「たて突く元気はあるようで。ほら、涼しいか?」
「……ちょっと…」

読んでいた薄い冊子でパタパタと扇いでやれば、細い髪をゆらゆらと揺らし新緑の瞳が僅かに細まる。
猫みたいなそれにユンファは口端を緩めて、そうだなーと膝に頬杖をついた。

「暑いし、冷たい料理でも食べに行くか?」
「…食欲ない」
「木陰でゆっくり休むとか、水浴びとか」
「……面倒」

何を言ってもへばってやる気のないルックに、もはや呆れを通り越して笑うしかないだろう。
まあまずは手っ取り早い方法だよなとユンファは立ち上がって棚の扉を開けた。

「とりあえず短い服に着替えろよ。その服じゃ見てるこっちが暑い」

真っ白な服を取り出し、ユンファは楽しそうにそれとと言ってもうひとつ何かを取り出す。
先ほどの冊子で自分を扇ぎながら、ルックが首を傾げると、くるりと振り向いたユンファがぴっと一本の紐を両手で張ってみせた。
実に楽しそうな顔である。

「髪、結ってやるよ。そしたらちょっとは涼しいだろ?」


暑い日は甘やかされ放題である。