5.ってしまった

 壁で遮られているというのに、その向こう側を思うと気まずくて仕方なかった。俺って確実に空気が読めていない。失敗した。姉ちゃんにご近所さん付き合いは大切にね、って言われていたのに、完璧に聞くタイミングを間違った。
 自分の部屋なのにどことなく居心地が悪くて、隣から物音がする度に俺は肩を震わせる。ため息をつく。俺は自分で安らぎの場所を壊してしまった。

「どうしたの?総ちゃん。ため息ばっかりついて。もうちょっとタバスコかける?」
「いえこれで十分でさァ」
「そう?」

 コトンと備え付けの台の上にタバスコの瓶を置いて、姉上はちょっと残念そう顔をする。日が持つようにと業務用を買ってきたのに、姉上の手にかかれば業務用だろうと工場ごと買い占めようとタバスコなんて辛い物は水のようになくなるのだ。
 さすが姉上。意味もなく感心して、俺は醤油なんだかゴマなんだか最初の味付けすらわからない激辛煎餅を口の中に放り込む。

 あの雨の日の一件があって以来、俺は学校とバイトの合間に部屋に居られる時間があっても、逃げるように姉ちゃんの病室に足を運んでいた。姉ちゃんはそんな俺を不審に思ったり理由を問うたりもせず、総ちゃんが会いに来てくれて嬉しいと笑顔で俺を出迎えてくれる。再確認する。姉上はどんな時だって俺の天使だった。

 それでも部屋から逃げてきても隣人の土方さんのことを思うと憂鬱だった。なんであのタイミングで、しかもあんな風に聞いてしまったのかと二週間前の俺に問うてやりたい。
 土方さんと近藤さんは本当に良い人たちだった。ただのお隣さんの俺を、部屋に招いて雨宿りをさせてくれた。最初はなんだこの人たちは、と驚いたのだけれど、話しをすれば人の良さが言葉の節々から伝わってくる。
 嬉しかった。ここ最近で、一番。

(それなのに俺ってやつは…)

 土方さんに彼女の有無を聞いた。異性に聞くのならまだしも、同じ野郎にそれを聞くのは明日の天気を聞くようなもので即ち、特に意識して聞くものでもない。それなのに俺はなんだか妙に聞きにくくて、結局変に間を空けながらしどろもどろに聞いてしまった。

(あれじゃ絶対変な奴だって思われた…)

 今思えば聞こうと思った時点で間違っていたのだ。いくら意識して問う話題ではなかったにしろ、会ったばかりの人間に対してする内容ではなかった。
 土方さんの返答はかなり機嫌を損ねていたように思う。綺麗に整った眉を寄せてなんで?と問うてきた。そりゃ相手にしてみれば、なんでただの隣に住んでいる奴にそんなことを言わなきゃいけねーんだってとこだろう。ああああごもっとも!俺が間違ってやした!良い人だっただけに、気持ちの悪いことをしまってヘコむ。聞き方も聞き方だ。あれじゃ気のある人に恋人の有無を聞くようなもんじゃないか。男が男に、ンな聞き方をするなんて…。

 ふわふわと優しい感触がして顔を上げると、姉ちゃんが俺の頭を撫でてくれていた。

「どうしたの総ちゃん。浮かない顔をして」
「姉上。俺ァキモい奴なんでさァ」
「総ちゃんはキモくないわよ。私はムカデのほうが気持ち悪いわ」

 姉上は真面目な顔をしてそう言った。彼女にとってキモいの判断はムカデらしい。
 そんな天然っぽいところも大好きだ。
 姉上の白くて細い手が俺の手に重なってそのままぎゅっと握る。姉上は笑って力強く言った。

「総ちゃん。悩みがあるならお姉ちゃんに言ってみて。私も一緒に考えるわ。私総ちゃんの力になりたいの」
「姉上……」

 病気がちで体は弱いけれど、彼女はどんな病気にも負けない強い心を持っていた。
 透き通るような綺麗な目でじっと見られて、俺は心の蟠りをぽつりぽつりと話した。鍵を忘れて家に入れなくなったこと。その時お隣の人が部屋に招いてくれたこと。けれど言葉に失敗して相手の害してしまったこと。

「俺、絶対変な奴と思われやした…」

 最後に締めくくると顔を俯けてため息をつく。姉上はこんな弟に呆れているだろうか。そーちゃん、と続くその先をじっと待っているとまた頭を撫でてくれる。彼女は気丈に言った。

「大丈夫よ総ちゃん。お隣の方にも総ちゃんの良さは絶対に伝わるわ。だってね、総ちゃんは私の自慢の弟ですもの」

 顔を上げると姉上は俺の目をじっと見て柔らかく目を細めた。姉上の存在が俺の中でまたひとつ大きくなる。
 うんと頷くと、姉上が笑って言う。

「心配しなくても大丈夫。総ちゃんはムカデより何百倍もマシですもの」
「姉上、」

 ムカデを基準に考えるお姉ちゃんのことがちょっと心配になった。






6.八方がり

 あの一件から沖田とは会っていない。日にちにして約三週間ばかり。
 と言ってもあっちは学校にバイトに姉の見舞いと人生を屈強に生きるスパルタ高校生、こちとらのうのうと今日明日を生きる鈍りきった体の大学生だ。生活リズムも違うのだし、何より友達でもないのだから(ただのお隣さん)会っていない日々を気にするのは可笑しな話かもしれない。
 しかし別れ方が別れ方だっただけに、沖田の気を悪くしたのではないだろうかと家に帰る度隣のドアを見る度、俺は心の端に引っ掛かるような思いをする。
 酒が抜けた後に己の身を振り返ってみたが、考えれば考えるほど俺が悪いような気がしてならなかった。
 気になって気になって、アパートの外観が見える距離になると自然と隣の明かりを確認するのがすっかり癖になってしまった。けれど俺が帰るより先に沖田の部屋の明かりが薄いカーテン越しに漏れていることは数少ない。ついため息を溢しそうになり、それを飲み込む度に、何故俺はこんなに沖田のことが気になるのだと首を傾げる。

「俺からしてみればなんでオメーがそんなに隣を気にしてんのか分かんねーけどな。放っておけばいいだろ。オメーの人生にこれっぽっちも関わらないたかが隣人じゃねーか」
「ンなこと分かってるっつーの。けど俺が追い出したみたいで気が引けるんだよ。壁薄いから、必要以上に隣を意識するし」

 安さが売りの居酒屋は相変わらず賑やかだった。端に備え付けられたテーブルを陣取って俺は目の前にある豆腐に手を付ける。向かいに腰を下している野郎がはあとこれ見よがしにため息をついた。

「ったくよーなんでオタクそんなとこに引っ越したの?壁が薄くなきゃこうやって金を払って居酒屋なんかに来なくても、お前の部屋で宅飲み出来たのによー」
「安心しろ。例え壁が防音だとしてもオメーを家には呼ぶ日は永遠に来ねェから」
「いけずー」
「何がいけずだ。つーかお前も独り暮らしじゃねーか」

 酒を煽ると天パはひらひらと手を振った。

「ああダメダメ。この前ヅラと坂本と高杉で宅飲みしたら騒いで大家さんに注意されちまったから、今は宅飲み禁止ー。ってわけで可哀想な俺だからすいませーん!枝豆と刺身ひとつーこの人の奢りでー」
「って、ふざけんじゃねェぞコラァァあああ!!」

 声を張り上げても居酒屋の喧騒に紛れてしまって張り上げ損だ。向かい席の坂田は呼ばれて来た店員に「あっちの酔っ払いは気にしないでください」なんて言いながらデザートのイチゴパフェを頼んでやがって、こめかみがピクリと震える。マヨをぶっかけてやろうかコラ。

 無駄に疲れてため息ついて幸せ逃がして、俺は自棄になって強くもない酒を一気に煽る。なんだかもういろいろとやりきれない思いでいっぱいだった。いろいろと。

 大学の悪友である坂田に飲みに行く?と誘われて、俺も俺で居酒屋の空気を吸いたかったから誘いに乗ったが、やはり来るのは間違いだった。毎回何かしらに苛々してもう絶対付き合わねーと心に誓っている気がする。
 酒を煽ると枝豆を摘まんでいた向かいの天パーがちらりと俺を見て、やけ酒ほど勿体無いものはないと馬鹿にしながらのんびり豆を口に運ぶ。
 見れば見るほど何も考えてなさそうな死んだ魚みたいな目をしてやがる。けれどコイツの恐ろしいところはのんびりと波任せで漂っているようで、その実周りに存在する物を確かな目で見ていることだ。

「ってかさー、オタクがお隣さんを気にしてるのって、気を悪くさせたっていう罪悪感だけには見えねーんだけど」

 だからうっかり態度と外見に惑わされてズバリと見透かされたように言い当てられて、その度に俺は息を飲む。
 酒の手を止めて向かいを見やる。枝豆を絶えず食べる坂田の姿を見て止めていた息を静かに吐く。その通りだ。否定はせず、肯定の代わりに酒を飲む。

「なあ、恋人がいるかを尋ねられたらどう思う」
「…あーなに、そういう話?ちょっと気分が良いから多串くんのお悩み相談でもしてあげようと思ったけどそーいう話?何俺モテるんだけどどうすればいい?的な?あーやだやだ。銀さん聞く気失せた」
「馬鹿野郎。誰がいつンなこと言ったんだよ」
「だって漸くするとそういうことでしょ?恋人いるんですかー?って聞かれたーっていう自慢」
「ちげーよ。男にだよ」

 坂田は目をぱちくりと瞬くとはぁとため息を吐きながら机に突っ伏した。

「尚更つまんねー。そんなの聞くまでもねーじゃん。ただの興味本意でしょ?」
「しどろもどろに聞かれても?」
「聞きずらかっただけーとか」
「同じ野郎なのに?」
「中にはいるぜー。ヅラとかわりとそういうタイプかも」
「そう、だよなー」

 そこで坂田はぐいっと顔を上げた。

「なに?相手の野郎の聞き方、っぽかったの?」
「若干」

 と言っても俺も酒飲んでて酔っていたし、変なフィルターがかかって見えただけかもしんねーけど。
 坂田がじっとこっちを見るもんだからなんか居心地が悪くなってそっぽを向いて酒を飲む。
 なんとなく嫌な予感はしていたんだ。坂田が突然笑い出して俺の肩がビクリと跳ねる。

「え?マジで?!多串くんついに男まで惚れられたッ?!マジかよさっすが百戦錬磨の多串くん!いやーすごいすごい!マジですごい!男に、男に…ぷぷ」
「って笑ってんじゃねーよッ!!なんかすっげー腹立つ!お前に言われるとすンげー腹立つッ」

 コップを叩きつけても坂田は壊れたように笑うだけだった。
 何が面白いんだと言えばだってさーと坂田が目尻の涙を拭いながらいつの間にか運ばれていたパフェのクリームを掬って口へと運ぶ。

「悩んでるってことは、お前それなりに傾いてるってことだろ」
「なんでそういう話になるんだよッ!!俺はただ隣人だから当たり障りのない返事を考えてんだよ!」
「本当に?顔とか性格とか返事を迷う要素はあったんじゃない?」
「……ねーよ」

 ぶっちゃけて顔はドストライクだったりする、のだけど。

 沖田がはっきりと告白したわけじゃないが、そんな態度言葉を見て知ってしまったからにはそれなりに返事を用意しておかなければならない。と、俺は思っている。
 どんな返事を返そうか困っているのは、顔のタイプもそりゃほんのちょっとばかり要因に含まれているかもしれないが、坂田に言ったように隣人として円満な関係でいたいからでもあって。

「まあまあ。お前も女ばっかり相手にして飽きたのかもしれないし、よく考えたらいいんじゃねーの。彼氏が出来たとしても、俺は軽蔑しないから」
「だからそんなんじゃ、」
「じゃあ多串くんの新しい世界に向けて、かんぱーい!」

 人のコップに波波酒を注ぐと、坂田はそれは面白そうに酒を飲む。
 すいませーん、いちごパフェ3つー祝い事なんでーと恥ずかしげもなく頼む坂田に、俺は言うんじゃなかったと深いため息をついた。






7.これからもよろしくおい致します

 天候晴れ。風良好。
 清々しい日だ。数日続いた雨も漸く止み、一皮剥けたような夏空が頭上に広がっている。
 土方が沖田と再会したのはそんな日だった。大学の用事を済ませアパートの階段を上がり奥にある部屋へとたどり着き、鍵を開けようとしたまさにその時だった。ガチャリと隣の白いドアが開いて沖田が出てきたのだ。

「「あ」」

 同時に声を上げる。突然の再会に土方の頭は一瞬時を止めた。沖田も同じようで大きな空色の目をぱちぱちと瞬くと、ハッとして慌ててドアのカギを締める。そしてこっちを向くと頭をカリカリと掻いてぺこりと小さく頭を下げた。

「この前はありがとうございやした」
「あ、ああ」
「お帰りですかィ?」
「大学の用事があってな」
「大学も忙しいんですねィ」

 お前ほどじゃねえよ。言いかかって、嫌味かどうか言いあぐねて止めておく。
 頑張っているやつに頑張っていない奴が「頑張っているね」と誉めることになんの意味がある。

「お前は?バイト?」

 尋ねると沖田はええまあと小さく頷いた。
 そこで会話が途切れて、土方と沖田は気まずく佇むことになる。けれどこのまま「それじゃあ」と部屋の向こうに消えるのは惜しい気がして、土方の中で、あの時の言葉の意味を問うべきだと後ろ髪を引く何かがいる。
 しかし面と向かって「お前俺に気があんの」なんて聞く度胸がある土方でもない。言うべきか言わないべきか、ひどく悩んだ。

「あの、」

 沈黙の突破口を開いたのは沖田だった。あの夜のように言いづらそうに視線を動かして、そっと上目遣いで土方を見る。
 青い瞳に土方は妙に緊張した。小さく唾を飲み込んで、こくりと頷いて先を促す。

「この前、なんかアンタの気ィ悪くしちまったみたいですいやせんでした」
「…いや、俺も追い返したみたいですまなかった」

 沖田はゆるく首を振った。

「あんな風に聞かれちゃ誰だって気味悪い奴だと思いやすよ」

 土方は言った。

「そんなことはない」

 きっぱりと土方は言った。というより、気付けば自然に口から飛び出していた。その事実に土方自身がきょとんとする。
 沖田も土方を見て、次いで困ったように笑った。

「優しいんですねィ、土方さんは」
「…そんなんじゃねえよ」

 妙に照れ臭くなってぶっきらぼうに答える。何やってんだ俺はと呆れた。
 けれどやっぱりと土方は今までの言葉のやり取りで確信を得る。俺の考えは杞憂ではなかったのだ。
 沖田は、俺に気がある、と。

 土方はグッと拳を握りしめた。だとすれば土方も沖田に対する答えを用意しておかなければならない。そしてそれを今言わなくてはならないと土方は直感的に思った。
 ごめんと、断らなくてはならないのだと。

 どう切り出そうか土方は悩む。
 単刀直入に言ってもよかったが、土方は何故かこの少年を傷付けたくはなかった。
 沖田の気持ちに答えることは出来ないが、隣人として仲良くやりたいとは思っていた。

 そうこう考えている間に沖田がくるりと反対方向を向く。

「じゃあ俺はバイトがありやすんで失礼しやす」
「あ」

 去っていく沖田の後ろ姿に土方は咄嗟に声を漏らす。ギュッと拳を握りしめてしっかりしろ十四郎と己を奮い立たせて言った。

「彼女いねえから」
「え」

 吐き出した言葉に沖田が振り返る。
 土方の黒い目がじっとこっちを見ていた。その口が言葉を繰り返す。

「彼女いるかって聞いたよな。俺、今彼女はいねぇから」
「…マジですかィ?」
「ああ。でもッ、」

 でもお前の気持ちには悪いけど答えられねえ。ごめん。でもさ、でも隣同士仲良くやっていきたいと思ってんだよ。お前が良ければまた前みたいに近藤さん入れて飲んだり食べたり出来たらいいと思うし!
 そう続くはずの言葉はけれど、土方の口から出ることはなかった。

「よかった」

 土方の言葉を聞いて沖田が心底嬉しそうに笑ったからだ。土方は言葉を忘れて見惚れてしまう。
 だがしかし。

「いやー安心しやした。アンタに彼女が居たらどうしようかとか考えてたんでさァ。アンタ顔が良いから彼女の二人や三人、五人六人いたって可笑しくないですからねィ。毎夜毎夜聞く羽目になったらどうしようかと思ってたんでさァ」
「……。お前は俺のことをどんな風に見てんだよ。つーか毎夜聞くって何?」

 呆れて物が言えないとはこのことだった。
 沖田は大きな目をきょとんと瞬いて、こくりと首を傾げる。
 そして可愛い顔でとんでもないことを言うのだ。

「何って、あんあん鳴く喘ぎ声ですよ」
「ぶッ」

 思ってもいなかった言葉に噎せた。ゲホゲホゴホゴホと咳が出る。
 そんな土方を見て沖田は平然とした顔で「大丈夫ですかィ」と宣う。
 大丈夫じゃねえよ。お前白昼堂々と何言ってんだよ。物にはTPOというものがあってお前、それはちょっといきなりすぎるだろ。俺にも心の準備ってもんがあんだよ…!
 いろいろと一から十まで言ってやりたかったが、如何せん息苦しくてそれどころじゃなかった。
 最近の高校生はみんなこんなことを平気で言うのかとたった4歳の差が怖くて仕方なかった。
 いやいやそうじゃなくて。
 体勢を整えて再度土方は問う。

「じゃあ何?俺に彼女が入るのかって聞いたのも、」
「へィ。隣の壁からあんあんきゃあきゃあ猿の声が聞こえたらどうしようかと心配だったもんですから」
「(猿って…)じゃあお前、好きな奴は…?」
「へ?俺?いやせんぜ。俺ァ姉ちゃんと自分のことで手一杯なんで」

 とんでもない早とちりならぬ勘違いだったのだと、土方がようやっと気付いた瞬間であった。
 呆然とする哀れな男を見て、無邪気に沖田が問いかける。

「あれ、ひょっとして気にしやした?」

 気にした気にした思いっきり気にした。

(だから責任取って俺と付き合って)

 とは情けなさすぎて死んでも言えない土方である。
 あ、じゃあ俺ァバイトなんで。これからもよろしくお願いしまさァと杞憂が晴れて元気に階段を駆け降りるお隣さんの背中を見送って、土方は大きなため息を吐いてガックリと肩を落とした。
 何を期待していたのかは分からないが、なんとなく気落ちしている。タバコがむしょうに吸いたくてたまらなかった。


 ただのお隣さんで終わりそうにないと土方がぼんやりと思ったのはこの時である。
 そしてそれを現実として実感する日が来るのは、まだ遠い日のことであった。